海洋深層水の特性
海洋深層水とは光合成による有機物生産よりも微生物による有機物分解が大きく、かつ、海水の上下混合や人間活動の影響が少なく、補償深度より深いところの資源性の高い海水で、一般には水深200m以深の海洋水がこれに相当する。(補償深度:植物の光合成量と呼吸量が等しくなる光の強さの深さ)
そしてその特性は以下のようにまとめられる。
- 低温性:水温が表層水より大幅に低い。富栄養性:植物に必須な無機栄養素(栄養塩型元素)がバランス良く豊富に存在する。
清浄性:汚染物・微生物や病原菌・分解性有機物質・濁りなどが少なく清浄である。 - 水質安定性:これらの水質の変化が少なく、物理・化学・生物学的に安定している。
- 再生可能資源:極地・寒帯より常に再生供給されている。
表層水に比べると、海洋深層水中には「窒素」「リン」など植物の栄養素が、おおよそ3〜5倍量含まれている。人工肥料に比較すれば少ないが、微細藻類の培養にうまく利用することができれば、天然の肥料としての効果を発揮する。海洋上には、湧昇域と呼ばれ、何らかの自然条件により海水が海底より水面に湧き上がっている場所がある。全地球の海表面のわずか1%程度だが、この1%の湧昇域で魚類生産の80%が行われている。湧昇域では海底から豊富なミネラルが供給され、海表面で微細藻類の旺盛な増殖が起き、仔魚は微細藻類を餌として発育する。微細藻類の生産する脂肪酸には、仔魚の発育に必須であるものも少なくない。