バイオマス燃料のポジションについて
バイオマスエネルギーは、他の再生可能エネルギーとは全く違う位置付けにある。産業革命以前のエネルギー使用は、薪や炭を燃やし煮炊きをしたり暖をとったり、油脂を燃やして明かりとした。また風車や水車、帆船などにみられるように、動力源として水力や風力を直接的に利用していた。
エネルギー利用形態が激変したのは、人類が満を持して迎えた産業革命である。第一次産業革命では、石炭を利用した高効率蒸気機関が開発された。続く第二次産業革命では、電力による電動機、石油による内燃機関の発明があり、それらは産業の起爆剤となった。なかでも、これまでのエネルギー源に加え、電力という非常に使い勝手の良い神器が登場したことは特筆に値する。先進国では、この電力を使うためのインフラを挙って整備し、電力を得るために水力や原子力を利用するようになった。電力がSecondary Energyと呼ばれる所以である。
現在、新エネルギーとされる太陽光・熱、風力、地熱、波力、温度差などもその利用形態はいずれも電力である。今日では、電力が私たち文明人の生活を根底で支えていると言っても過言ではない。しかし、その便利な電力には、今のところ大容量の蓄電技術がないという大きな欠点がある。そしてそのことが、安定供給が難しいとされる多くの再生可能エネルギー(自然エネルギー)の利用拡大の障害にもなっている。
一方バイオマスが生産するエネルギーは、地質年代的なスケールで保存可能であることが実証されている。微細藻類は、油脂やエタノール、ガスなどを生産し、化合物としてエネルギーを貯めておける。さらに、それを燃やして熱源(熱利用)や電力(電力利用)とすることもできるし、内燃機関に使用して動力源にもなる(燃焼利用)。実際、日本における石油製品の用途別消費量をみてみると、電力利用は10%に満たないが、鉱工業には電力利用のおよそ2倍量の需要がある。溜めた油は、エネルギー利用以外にもプラスチック原料など化成品原料としての重要も大きい。以上から、微細藻類から抽出した油は、エネルギーを貯蔵しておくことができること、エネルギーとしての利用形態が複数あること、化学品原料となることがその大きな特長なのである。
ところが実はもう一つ大きな利点がある。それは、微細藻類培養では、油以外にも、副産物として素材原料となりうるさまざまな化合物を生産できるという点にある。(倉橋,小柳津(2013)『応用微細藻類学』成山堂書店.)