バイオマスショア構想
藻農業(ものうぎょう) - Algaculture
「人間の生活に役立たせる目的で,藻を増殖させる」ことは,農業や工業と同様,一つの新しい産業を生み出すことになります. 私たちは,この新しい産業を「藻農業(ものうぎょう)」と呼称することを提案します. 欧米ではすでに,「Algaculture」という造語が10年程まえに誕生しています.
バイオマスショア構想について
私たちが提案する「バイオマスショア構想(Biomass Shore Initiative)」を紹介したい。
化石燃料を燃焼させる主な目的は、エネルギーを得ることである。正直、エネルギー密度の高い化石燃料は、言わば精製糖であり、私たちは中毒(アディクション)の状態にある。私たちが成し遂げなければならないのは、化石燃料(高エネルギー密度)使い放題社会から、再生可能エネルギー(低エネルギー密度)使いこなし社会への転換である。
このバイオマスショア・イニシアティブの目的は、これまで利用されることのなかった海岸沙漠地域に、石油コンビナートに替えバイオマス・コンビナートを形成させることで、二酸化炭素を削減しながら産業活動を行える社会のモデルを形成することである。
大気中の二酸化炭素濃度を増やさない再生可能な社会を創造するための目標は、
- 大規模(大気成分にコミットするような規模)
- プラス経済収支(経済的に持続可能であることが推進力となる)
- 短期間で実用化する(危機はすでに引き返すことのできないポイントに達したといわれており、一刻の猶予も許されない状況にある)
このコンビナートは、太陽熱を利用した温度差淡水化システム、高度好塩性微細藻類を基盤とした大規模な微細藻類バイオマス生産システム、微細藻類生産物を出発点とした植物由来化学品産業、発酵産業、スマートアグリ産業、スマートアクア産業のユニットで構成される。
バイオマスショア・プロジェクトの内容を簡単に説明すると、例えばペルー、チリ沖に大量湧昇している海洋深層水(DOW)を、温度差(太陽熱とDOWの低温性を利用)淡水化技術により、濃縮DOWと淡水(農業などに利用)に分ける。
沙漠海岸に水田を造成し、肥料入り海水である濃縮DOWを引き込み、高度好塩性微細藻類を培養する。
微細藻類から様々な有機物質を抽出し、これらを原料とする上記産業を集合・連結させ、バイオマス・コンビナートを造成する。
バイオマスショア構想における「藻農業(ものうぎょう)= Algaculture」は、その生物(微細藻類)の生態に適した立地で、持続的でコストのかからない農業的な培養を行うことを特徴としています。
さらに重要な点は、バイオマスショア・プロジェクトで必要となるエネルギーは、すべて再生可能エネルギー(第一候補は、太陽熱)で賄うことである。二酸化炭素収支も保たれ、各産業は再生可能ネルギーと低価格な原料を利用することで、強い競争力も持つことになる。
縮小していく熱帯雨林に替わって、沙漠に出現した微細藻類大規模水田が二酸化炭素を吸収してくれるであろう。早期にバイオマスショア・プロジェクトが実現し、ポスト化石燃料社会のモデルの一つになることを切に願っている。
SDG'sを最大限に活用する東京大学未来協創推進本部の登録プロジェクト
バイオマス・ショア構想は、SDG'sを最大限に活用する東京大学未来協創推進本部(UTokyo Future Society Initiative)の登録プロジェクトとなっています。
我々の研究成果(~2021)
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EUによるD-Factory※ 研究成果の10倍の培養スピードを 達成することに成功した(千葉の実験場)。
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加えて、コストがD-Factory の10分の1程度となった。
2021年9月、ペルー生産省の機関と共同研究契約を締結し、共同で再現性実験を開始した。
※ D-Factory project(DはDunaliellaのD)は、EUが13億円の研究開発費と4年の歳月をかけ、Dunaliella の栽培と処理に基づく持続可能なCO2藻類バイオ・リファイナリー確立を目的に行ったプロジェクト。
研究風景
カロテノイドの豊富なオレンジ色のDunaliella(デュナリエラ)
カロテノイドの豊富なオレンジ色のDunaliella(デュナリエラ)の顕微鏡写真
動画
Dunaliella のメイティング
Dunaliella がメイティングをしている様子です(DNAの情報交換?)。
トコブシが海藻を捕食している様子
一般社団法人 バイオマス・コンビナートで気候変動に答えを出す会
一般社団法人 バイオマス・コンビナートで気候変動に答えを出す会が発足しました。
※この法人は、個人の方の裁量で発足した会であり、運営もその方々が自発的に行っています。
各種SNSで情報が公開されています。