大気中の二酸化炭素濃度
NOAA (アメリカ海洋大気庁)のウェブサイトには、大気中の二酸化炭素濃度について、以下のように記載されている。
出典:NOAA (National Oceanic and Atmospheric Administration) Climate Change: Atmospheric Carbon Dioxide
https://www.climate.gov/news-features/understanding-climate/climate-change-atmospheric-carbon-dioxide
2017年の地球規模の大気中の二酸化炭素は、405.0ppmであり、誤差範囲は±0.1ppmであった。今日の二酸化炭素濃度は、少なくとも過去800,000年のどの時点よりも高い。
「EPICA(氷床コア)データに基づいた過去80万年間の大気中の二酸化炭素濃度(ppm)」 二酸化炭素レベルのピークと谷は、氷期(低二酸化炭素)と暖かい間氷期(高二酸化炭素)の上下を示します。しかしこれまでは、これらのサイクルを通じて大気中の二酸化炭素は決して300ppmを超えなかった。それが、2017年には405.0ppm(黒い点)に達した。NOAA Climate.govの記載は、NOAA NCEI古気候学プログラムによって提供されたEPICAドームCデータ(Lüthi, D.,ほか, 2008)に基づいています。
大気中の二酸化炭素の量がこれほど高くなったのは300万年前以来のことであり、実際、産業革命前よりも2〜3℃(3.6〜5.4?)高い温度であった。300万年前の海水準は今日より15〜25メートル(50〜80フィート)高かった。
人々がエネルギーを消費するために燃焼している化石燃料が主な原因で、二酸化炭素の濃度は上昇しています。石炭や石油のような化石燃料には、何百万年の間に光合成によって大気から取り出された炭素が含まれています。それを我々はわずか数百年でその炭素を大気に戻しているのです。
明るい赤色の線(ソースデータ )は、ハワイのNOAAマウナ・ロア観測所での月平均二酸化炭素濃度をppm単位(百万分率)で示しています。乾燥空気中での、分子百万個当たりの二酸化炭素分子の数です。北半球では光合成の影響で、冬に高く、夏には低くなります。濃い赤色の線は、12ヶ月間の平均値として計算された年間トレンドを示しています。
NOAAと米国気象学会の2017年の気候報告によると、大気中の二酸化炭素濃度は、2017年に405.0±0.1ppmと過去最高を記録しました。2016年から2017年にかけて、世界の年間平均二酸化炭素は2.2±0.1ppm増加し、2015年と2016年の間の増加率(3.0ppm /年)よりわずかに低かった。
1960年代、大気中の二酸化炭素の世界的な増加率は、年間約0.6±0.1ppmでした。しかし過去10年間で、成長率は年間2.3ppm程度となっています。過去60年間の大気中の二酸化炭素の年間増加率は、過去の自然増加量よりも約100倍速かった。最終氷期は11,000-17,000年前に終わりが到来した。
二酸化炭素濃度の将来予測についてはIPCC貢献地球環境予測プロジェクトにより行われている。これは海洋研究開発機構、東京大学大気海洋研究所、国立環境研究所がプロジェクトに関わり作成したものである。IPCCは第5回の報告書から「RCP(Representative Concentration Pathways, 代表濃度経路)シナリオ」に基づいて気候の予測や影響評価等を行っている。このシナリオのどの経路を取るかで将来の二酸化炭素濃度を予測することができる。
出典:IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change, 国連気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書に関する特設ページ
http://www.jccca.org/ipcc/index.html
出典:JAMSTEC ジャムステック(Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology:海洋研究開発機構)のプレスリリース「IPCCに向けた主要な数値実験の終了とその成果〜 世界の気候変動研究を先導 〜」
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20110223/
人体への影響
二酸化炭素濃度が1000ppm(0.1%)を超えると人体に深刻な影響が出ることが示唆されている。
出典:厚生労働省の建築物衛生管理検討会報告書
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/07/s0708-1.html
(以下斜体部は引用)
4−2 空気環境の調整
(3)二酸化炭素の含有率
二酸化炭素は、少量であれば人体に影響は見られないが、濃度が高くなると、倦怠感、頭痛、耳鳴り等の症状を訴える者が多くなることから、また、室内の二酸化炭素濃度は全般的な室内空気汚染を評価する1つの指標としても用いられていることから、二酸化炭素の含有率は「百万分の千以下」と定められている。良好な室内空気環境を維持するためには、1人当たり概ね30立方m/h以上の換気量を確保することが必要であるが、室内の二酸化炭素濃度が1,000ppm以下であれば、この必要換気量を確保できていると見なすことが可能である。
二酸化炭素濃度が認知能力を低下させる
ハーバードT.H.Chanパブリックヘルススクール健康環境研究科のJoseph G. Allenらは、Environ Health Perspect. 2016 Jun; 124(6): 805?812.に、室内二酸化炭素濃度の変化に伴う人間の認知能力の低下についての論文を発表している。
(題名 "Associations of Cognitive Function Scores with Carbon Dioxide, Ventilation, and Volatile Organic Compound Exposures in Office Workers: A Controlled Exposure Study of Green and Conventional Office Environments" リンクはアメリカ国立医学図書館衛生研究所のウェブサイトで公開されている論文情報)
この研究では室内環境における二酸化炭素濃度が500ppm〜1,000ppm〜1,500ppmと変化することによって、人間の9種類の認知機能領域がどのように影響を受けるかを評価している。以下にその領域の詳細を示す。
認知機能領域 Cognitive function domain |
説明 Description |
---|---|
基本活動レベル Basic Activity Level |
常に意思決定を行う能力 |
応用活動レベル Applied Activity Level |
目標を達成するための意思決定能力 |
集中活動レベル Focused Activity Level |
目前の状況に注意を払う能力 |
タスク完了方向づけ Task Orientation |
目前のタスクの完了に向けた具体的な意思決定能力 |
危機対応 Crisis Response |
緊急時に計画を立て、準備をし、戦略を立てる能力 |
情報を求める Information Seeking |
利用可能なさまざまな情報源から必要な情報を収集する能力 |
情報の使用 Information Usage |
提供された情報と全体的な目標を達成するために集められた情報の両方を使用する能力 |
アプローチの幅 Breadth of Approach |
複数の次元を組み合わせて意思決定を行い、目標を達成するためのさまざまな選択肢と機会を利用する能力 |
戦略 Strategy |
最適な情報活用と計画の助けを借りて、よく統合された解決策を使用する能力を反映する複雑な思考パラメータ |
結果は次の図の通りである。
室内二酸化炭素濃度の上昇に従って、認知能力が著しく低下する機能とそうでないものがある。空気中の二酸化炭素濃度が上昇しても「基本・応用活動レベル」「タスク完了方向づけ」「情報を求める」機能はあまり影響されないが、「危機対応」はひどく乱され、さらに「集中活動レベル」「情報の使用」「戦略」機能は著しく低下していることがわかる。
現在は二酸化炭素排出量の最も多いケースであるRCP8.5のシナリオに沿って地球温暖化が進んでいる。化石燃料の使用を抑制せずこのまま経過すると、大気中の二酸化炭素濃度は、2100年頃には1000ppmを超えることになるだろう。それほど遠い将来とは言えない。このシナリオに直面した人の大部分が示す態度は「わたしはもうそのときは生きていないので関係ない」といった反応である。子や孫の世代が苦しむことになるようなこの状況を放置し続けていいのだろうか。